ロング・バケーション (4)

 1  2  3  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  Gallery  Novels Menu  地下室TOP  Back  Next

 惑星フリーザNo.75。
 後にそう呼ばれたその星は、赤く、乾いていた。
「にしても、暑いとこだよなあ」
「特に環境がいいとも思えんしな。フリーザ様は何が面白くてこんな星を欲しがってらっしゃるんだ?」
 彼の2人の部下は、自分達が築いた瓦礫の山影の中で照りつける太陽を避けながら、文句を言ったり不思議がったりしている。倒れた柱に腰を下ろしていたラディッツが、風に舞い上げられた砂埃に一つ咳を落とし、空を見上げて眩しそうに目を細めた。
「地下資源をお望みなんだろう」
 彼は二人の前に転がっている建造物の欠片らしきものに腰を下ろしながら言った。
「地表に亀裂を作らないようにしろという指示を受けた。そうとしか考えられん」
「まったくよ、やりにくいったらなかったぜ」
 非難がましい声を上げたナッパに鋭い視線を送り、彼は黙ったまま自分の装着しているスカウターを指差した。
「あ、やべえ」
 通信機能を備えているそれのスイッチが入っていることを思い出し、ナッパは慌てて片手で自分の口を塞ぐ。
「あ」
 その時、ラディッツが小さく声を上げた。
「何だ」
 問い掛けると同時に、彼自身のスカウターが反応した。彼の後方、ラディッツの視線の先に小さな生命反応がある。
「妙だな―この辺りはもう一掃したと思ってたが・・」
 彼らは立ち上がり、反応のある方向へと歩を進めた。動きがない。死にかけているのかもしれなかった。
 それは崩れた建物の陰にひっそりと蹲っていた。
「女だな」
 ラディッツが呟いた。近付くにつれ、それが薄い褐色の肌に長い黒髪の、どうやら女であるらしい事が知れた。目立った外傷は無いように見えるが、逃げる様子はなく、どころか彼らの方を見ようともせず、黙ったままじっと動かない。
「こりゃ上玉だ」
 真傍まで近付き、ナッパが今にも舌なめずりしそうな様でその顔を覗き込む。
「ナッパ、あんたホントに好きだなあ」
 さっきさんざん楽しんでたじゃないか。呆れたように言いながら、ラディッツがその様子を眺めている。
「ベジータ、あんたどうだ」
 ナッパの言葉には、一応訊いてみるだけだという色がありありと見えた。この二人は、彼がそういったことに積極的でない事をよく弁えている。なので最初、彼の言葉の意味を飲み込めないでいるようだった。
「そうだな」
 一言、そう発した。彼らは一瞬ぽかんと口を開け、それから顔を見合わせ、もう一度彼の方を見る。
「そうしよう」
 しいん、と沈黙が降りた。次の瞬間、ナッパの大きな笑い声が響く。
「ベジータ、遂にあんたにも解ったって訳か」
 いいぞ、なあラディッツよ。ナッパは隣で口が塞がらないままで突っ立っている男に同意を求め、ばんばんと背を叩いた。その勢いにラディッツはつんのめり、まろぶようにして二、三歩前に飛び出す。
「馬鹿笑いはよせ。下らん事を言ってる暇があるのならさっさと後片付けして来い。スカウターを見ろ、生き残りがいるだろうが」
 彼は部下達を鋭く見遣って命令した。ナッパは口元に卑猥な笑いを浮かべ、まだ目を丸くして突っ立っているラディッツを促してその場を離れる。お楽しみの邪魔なんだとよ。彼らが飛び立つ寸前、ナッパの吐いた言葉が耳に届いた。



 1  2  3  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  Gallery  Novels Menu  地下室TOP  Back  Next