ともにいるこのひとときを (1)

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「それ、ホントはパパがえらんだんだ」
 マーロンへのプレゼントの白いドレス(他二点)についての、トランクスの衝撃の告白。
 とある春のカメハウス。驚愕のあまり動けなくなったのは、クリリン、18号、亀仙人、そして亀。ヤムチャは自分の勘が的中したことに満足した様子で、大きく頷いていた。

 同じ年の、ある夏の午後。その『白い疑惑―今夜明かされるベジータの秘密!ドレスに隠された衝撃の過去』について、詳しい経緯を聞かせろという、同メンツのリクエスト。
「あのとき詳しい話聞かなかったろ。後で、なんでそんな面白い話聞いとかなかったのか、って話になってさあ」
「なんか火サスみたくなってる!・・まあいいけど・・でも、ぜっったいにひみつにしといてよ?」
「バレたら殺されるんだろ?そんな強烈におもしろそうな話聞かずにおけるかっての!」
「大丈夫だ。話してくれ」
 トランクスは、こんなのおもしろいのかなあ、と首を傾げつつ、話し始めた。
 
 
 西の都に最近出来たショッピングコート「ゴールデンストリート」の一角。
 ブルマのお気に入りのデザイナーが、子供服を手掛けるようになったということで、プレゼントはそこで調達しようということになった。ブルマは一人でいても十分目立つが、その日は美形の子供と、視線だけで人を殺せそうな目つきの悪いエキセントリックな髪型の男が一緒だったためか、異常に人目を引いた。それをものともせず、彼女は楽しそうに嬌声をあげながら、次々と商品を手に取ってゆく。
 ね、これいいと思わない?彼女が手にとって男たちに見せたのは、真っ赤なスリップドレスだった。子供用ではあるが、大人のものをそのまま小さくしたようなデザイン。細いストラップ、大きくくれた胸元。さすがに体のラインを強調して際立たせる設計にはなっておらず、そこだけが大人のものとの違いに見えた。
『ちょっと待て、あのガキにこれを着せるっていうのか』
『あら、赤いドレスはブロンドの女の定番じゃないの』
『女って歳じゃないだろ。母親の方にってんならまだ分かるが』
『確かに似合いそうね。へええ、あんたああいうタイプが好みなんだ』
『話をそらすな』
『否定しないわけね』
『好みもくそもあるか。そういう話をしてるんじゃないだろうが。大体あの女の体でこんなもの着てみろ、すかすかになって棒切れが布引っ掛けたみたいになっちまうのがオチだ』


「何だって?」
 黙って話を聞いていた18号がトランクスをぎろりと睨む。オレが言ったんじゃないよ!と彼は慌てて首を振って否定する。
「まあまあ、奴は『スリムだ』なんて気の利いた言い回し知らないんですよ」
 ヤムチャはフォローになってないセリフで彼女を宥めながら、先を促す。
「それで、どうなったんだ?」
「う、うん、それで・・・」


『あら、よく知ってるのね〜。ひょっとして身体の細かいサイズとかも知ってるんじゃないの?』
『肉弾戦でやりあったことがあるんだぞ。分からないはずないだろうが』
『細かいサイズが!?』
『違う。棒切れみたいだってことがだ』
『・・・あんた、否定してないじゃない』
『いい加減にしろ。強制される覚えはない』
『ちょっと!どういう意味よ!?』


「・・あいつって割と恋愛上手みたいなとこあるからな」
「それどういう意味すか!?ヤムチャさん!」
「ち、ちがうちがう、そうじゃなくて。ブルマとの掛け合いのことだよ。楽しんでるっていうか・・・オレなんかよりよっぽど上手いとこあるんだ」
「クリリン、あんた何ムキになってんだよ。あたしがあんなの相手にするわけないだろ」
「でも、今はあいつの方がずっと強いんだぜ。力で押してこられたら・・」
「・・おいおい何本気で心配してんだよ。大丈夫だ、その手のタイプの男じゃないし」
「いやさっきからあんまフォローになってないんすけど!?」
「・・・つづき、はなしていい?」


『もー、パパもママもやめてよ、こんなとこで・・オレはずかしいよ』
『トランクス!大人の話に首を突っ込まないの!』
『どうでもいいが、話が逸れてるぞ。これじゃいつまでも決まらん』
『あんたが原因でしょ!・・まあいいわ。後でゆっくり話し合いましょ。今はプレゼントが先ね。で、あんたはこのドレスじゃNGだって思ってんのね』
『どうでもいい。だが俺なら選ばん。下品だ。相手はガキなんだぞ』
『いいわ。だったら、あんたに選んでもらおうじゃない』
『・・何故俺がそんなこ』
『王子様のお上品なセンスで選んで頂戴って言ってんの!人にあれだけ言っといて、出来ないなんて言わせないわよ』
『あれだけって俺が何を言ったと言うん』
『勝負すんの?しないの?』
『・・貴様・・・』
『どう?まさか逃げないわよねえ』


「ベジータのやつ、なんかうまく誘導されてないか?」
「そうなんだ、なんでもギャンブルにもちこまれてまけるほうにはなしをもってかれちゃうんだ。『勝負』とかいわれるとパパあとにひけなくなるみたい。よくあるよ、こういうの」
「ブルマが一枚上手ということじゃな」
「それにしても子供にまで見抜かれてるって・・」



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