助けなかった理由

〜彼らが生きてきた世界〜

 Gallery  店主のつぶやき

 論争を呼んだシーンですよね。(Blog7/23『助けなかった理由。』加筆・修正)


 人造人間編で、ブルマの乗った飛行艇が攻撃されたのに、ベジが知らん顔してるシーン。
 様々な見解があって、ベジブルスキー様の多くが「他に人(でかトラ)がいたから任せた」説を採られているようです。店主もリアル時はそうでした。しかし今は、『単に目に入っていなかったんだろう』(笑)と思っています。

 一見ひどいことのように思えますが、彼は地球で生活してきた人ではありません。感覚も価値観も全く違っていて当然だったのではないかと。彼の生きてきた環境を考えれば「誰であろうと自分で自分の身を守るのはあたりまえ」だったでしょう。「助けねばならないものだ」という感覚すら無かったのではないでしょうか。

 ブルマ達と生活する中でそういった価値観は少しずつ変化していったでしょうが、あの時点の彼にそれほどの激変は期待出来なかったのではないかと思います。ましてあの時は戦いの事で頭が一杯だったでしょうし。彼女の方もそういう彼をよく解っていて、助けられることを期待したり、助けられなかったことを怒ったりするということは無かっただろうと思います。(そしてそれが、彼のすべてを受け入れて抱擁する彼女の大きさだったのではないだろうか、と思ったりします)。

 何を優先させるかという価値観の問題ではなく、本能の問題だと考える事も出来るかもしれません。「男が自分の女を守ろうとするのは本能的な行動だ、思考や価値観の問題ではない」と。であれば、まずその「保護本能」の発動パターンがサイヤ人にも当てはまるかどうかという問題になろうかと思います(サイヤ人にというより、あの時点でのベジータに、ですが・・)。
 地球(全体とは申しません)に於いて、男性がその保護本能を充足させるか弱い女性に魅かれるのは、「特別な存在として認められたい」という欲求から来るものであると言われますが、いざ自分が生きるか死ぬかという状態になったときに雄が雌に求めるのは、そんな高次的欲求の充足ではなく「子孫を守って生き延びる強さ」なのではないでしょうか。サイヤ人の(守るための、狩るための、ではなく)「より強い者と闘いたい」という戦闘本能がどんな必要から生じたものなのかは分かりませんが(生存範囲の拡大?)、それを至上のものとして常に戦いを追い求める彼らが(つまり常に瀬戸際で生きる彼らが)、庇護を必要とする存在に、地球でそこそこ安穏と生活している我々が感じるのと同様に魅力を感じるものでしょうか。

 まあ色々言ってますが、件の場面に於けるベジータの目に、彼女は「庇護する対象」として映ってはいなかったのではないかなあと店主は思っています。と言って、ブルマが例えばあの場で亡くなっても彼は何とも感じなかっただろう、とまでは考えていません。それを何と呼ぶかは知らなくとも、彼は確かに彼女に惹かれていた筈だと思っていますので。しかし「助ければよかった」とも思わないでしょう(そういう考えそのものが無かったのでは、ということを前提にした場合)。痛い思いをしながら、「この女を失った」という事実に向き合うのみなのではないでしょうか。あの時点では、ですが。